FAS住まい新聞2月号の今回は建築物省エネ法についてお伝えします。
◇建築物省エネ法が施行されます◇
2024年4月から、建築物省エネ法が施行され、4月1日以降に着手する住宅は、省エネルギー基準への適合が義務化されます。この義務化の目的は、政府が掲げる2030年度のCO2削減目標46%(2013年度比)や、2050年カーボンニュートラル実現に向けた取り組みの一環です。特に建築分野は、日本のエネルギー消費の約3割を占めるため、省エネ対策が急務となっています。
◇省エネルギー基準とは?◇
2024年4月から施行される省エネルギー基準は、以下の2つの基準で構成されています。
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外皮性能基準:
- 断熱性能はUA値で示され、数値が小さいほど熱損失が少なく、断熱性能が良いとされます(沖縄には基準がありません)。
- 遮熱性能はηAc値で示され、数値が小さいほど日射熱が入りにくくなります。一部地域では遮熱基準は求められません。
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一次エネルギー消費量基準:
- 設備(暖冷房、換気、給湯、照明など)を使用した際の年間エネルギー消費量を計算し、同地域の標準住宅と比較します。
- エネルギー消費量は標準住宅と同じか、それ以下でなければならず、理想的には下回ることが求められます。
◇省エネルギー基準は住宅の必須基準になります◇
2024年4月から、省エネルギー基準適合が義務化され、4月1日以降に着工する住宅は、省エネルギー基準を満たしていない場合、建築できなくなります。
これにより、建築物省エネ法は建築基準法と同格扱いになります。
新たに施行される省エネルギー基準では、「断熱等性能等級4」と「一次エネルギー消費量等級4」の性能が求められます。しかし、国は2030年にこの基準を「断熱等性能等級5」と「一次エネルギー消費量等級6」に引き上げる予定で、この新基準は「ZEH水準」と呼ばれ、補助金を受けるためにも必須です。
今年から5年間は「等級4」の基準で建築可能ですが、5年後に基準が引き上げられると、売却時に資産価値が下がったり、大規模リフォームで費用負担が増える可能性があります。将来を見据え、2030年の引き上げ基準を満たす住宅を検討することが推奨されます。
◇快適な住宅とは?◇
省エネルギー基準を満たしていることだけでは、快適な暮らしは実現できません。
例えば、気密性能(C値)についての規定が省エネルギー基準にはなく、気密性能が悪いと、断熱性能が良くても隙間から風が入って快適さが欠けてしまいます。また、換気性能も気密性が低ければ計画通りの効果が得られません。
省エネルギー基準を満たしている住宅でも、快適な環境が得られるわけではないため、単に基準を満たしているという思い込みは禁物です。
それでも、断熱性能がしっかりしていることは快適な住宅にとって必須であり、これまでの省エネルギー基準は中途半端な制度でしたが、適合義務化は住宅業界にとって重要な一歩となります。